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吉田朗の作品に対して行われた著作権の侵害、無断改変された作品の公開等の問題について。

アーティストを応援してくださる皆様、関係者各位、

いつも弊社マネジメントアーティスト・吉田朗をご支援いただき、誠にありがとうございます。

本日は吉田朗の作品「渋谷猫張り子」に対して行われた著作権の侵害、まるで別の姿に無断で改変された作品の公開と、アーティスト側の許可なく行われた改変作品撤去など、一連の被害について初めて言及させていただきます。

渋谷猫張り子 改変前後の画像 sequence MIYASHITA PARK内「SOAK」にて

左 吉田朗・作「渋谷猫張り子」 2020年制作
三井不動産株式会社が所有するホテル、シークエンスミヤシタパーク(sequence MIYASHITA PARK)の最上階にあるバー「SOAK」内に設置。同店舗のために特別に制作された作品。制作、設置当時の同店運営会社は株式会社BAKERU。(撮影:田中太郎)

右 吉田の作品全体、およびアーティスト名と作品名を示した銘板のある台座部分をラッピングシートで覆い隠し、無断で改変された作品。
シートはグラフフィックデザイナーへの特注で製作され、接着には一時的なラッピングのためではなく、永続的な接着を目的とするダイノックプライマーが使用された。同店舗の現在の運営会社は株式会社マザーエンターテインメント。(撮影:吉田朗)

 

無断改変される前の「渋谷猫張り子」作品説明

吉田朗 「渋谷猫張り子」 2020年制作
H130 W91.8 D91.5cm ガラス繊維強化プラスチック、ステンレススチール補強、 真鍮製放水ノズル、ウレタン塗装、PVC フィルム

渋谷猫張り子 Shibuya Neko Hariko 改変前の画像

渋谷猫張り子 Shibuya Neko Hariko 改変前の画像

渋谷猫張り子 改変前の画像 sequence MIYASHITA PARK 設置状況

日本の伝統的なモチーフと現代的な造形を組み合わせることで、渋谷の新たなシンボルとなることを目指して制作しました。「招き猫」をモチーフに「犬張り子」と掛け合わせた新しい「猫張り子」キャラクターを創造しました。

形状的には、招き猫の形状に抽象化を施しながら、曲面をなめらかにつなぎ合わせることで現代的な造形としています。渋谷にはすでにハチ公像という多くの方に愛されるシンボルがあります。この作品を制作するにあたり、ハチ公像と対になることが出来たら良いなと考え、猫をモチーフに選びました。

作品前面は白を基調とし、日本のシンボルである日の丸をイメージしたパターンとしています。ライティングによって、作品イメージを変化させることも可能です。また、作品背面には横綱の綱と化粧まわしをモチーフにした装飾を施しました。綱の結びは不知火型をベースに、ループタイ的なアクセントとしています。

観光で日本を訪れる外国人の方々のみならず、日本人の方々にも、伝統的なモチーフと現代的な造形を組み合わせた作品により、現代の日本らしさを新たに発見していただきたいと思い制作しました。

 

経緯説明

2019年8月、吉田朗株式会社BAKERU(当時の社名は株式会社東京ピストル)より渋谷・新宮下公園等整備事業で翌年開業予定のホテル、sequence MIYASHITA PARK内「SOAK」に設置する作品の制作依頼を請けました。

その後、このプロジェクトに携わり、2020年4月に作品を設置。著作権や著作者人格権は納品後も作者である吉田朗に帰属しておりますので、作品に変更を加える場合は、本人の許可が必要です。

同店舗は新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言などの影響で、当初の予定より時期をずらして2020年11月にオープン。その後、吉田朗の「渋谷猫張り子」は店舗の宣伝に頻繁に使われ、メディアの取材も多くありました。

渋谷猫張り子 sequence MIYASHITA PARK メディア掲載 まいどなニュース様 Casa BURUTUS様

 まいどなニュース様
 Casa BURUTUS様

スクリーンショット引用元:
https://maidonanews.jp/article/14417454
https://casabrutus.com/posts/170765

2022月9月2日、弊社スタッフが「SOAK」のインスタグラムアカウントの投稿から、吉田朗 の作品が大きく姿を変えて展示されていることを発見しました。
また、店舗関係者と取引先、一般客などの撮影による多くの写真に辿り着きました。

しかし、同店ウェブサイトのトップページを確認すると、これまで通り、改変前のオリジナルの状態の「渋谷猫張り子」と吉田朗の顔写真やプロフィールが紹介されています。

何が起きているのか理解も出来ぬまま、株式会社BAKERU (以下BAKERU)に連絡を入れると、既に「SOAK」の運営から退き、株式会社マザーエンターテインメント(以下マザーエンターテインメント)に事業を譲渡したことを突如知らされました。

しかし、アーティスト側と同店舗側をつなぐ唯一の窓口は、作品設置前から設置後の全てにおいて一貫してBAKERU1社のみです。

そこでBAKERUを通して、作品が設置されているsequence MIYASHITA PARKの所有者である三井不動産株式会社(以下、三井不動産)とマザーエンターテインメント

1、 作品が改変された経緯
2、 改変の方法と作品の原状回復が可能か

を確認することを求めました。

急を要する案件にも関わらず、返信がない状態が続きました。
14日を過ぎたところで、弊社は著作権を専門とする弁護士に依頼しました。

その後の調査により、作品の改変は新しい運営会社であるマザーエンターテインメント三井不動産の許可を得た上で行ったとの回答を三井不動産マザーエンターテインメントの両社から得ました。

また、改変は作品そのもの(背面にはアーティストのサイン)と、作者と作品名が記された銘板がある台座部分の全てを、ラッピングシートを貼り、覆い隠す方法で行われたことがわかりました。接着剤には剥がすことを前提とした一時的なラッピング用ではなく、より永続的な利用のために使われる強力な接着剤「ダイノックプライマー」が使われたとのことです。

ラッピングのデザインを行ったグラフィックデザイナーのSNS投稿から、市販のラッピングシートではなく、ほぼ手書きでデザインを行った、手の込んだものであることも判明しました。落書き風のデザインの中には「MIYASHITA PARK」という文字も入っています。

渋谷猫張り子 改変後の画像 MIYASHITA PARK の文字

赤丸部分にMIYASHITA PARK の文字が認められる。(撮影:吉田朗)

マザーエンターテインメントは弊社がBAKERUに連絡した後、「SOAK」のウェブサイトからオリジナルの「渋谷猫張り子」や吉田朗の顔写真と略歴を削除しました。しかし、代わりに改変した作品の画像をトップページに掲載しました。InstagramやFacebookにも改変した作品は複数登場し、ダウンロードすることが出来る施設案内のPDFファイルの中にも掲載されていました。

作品改変後の作品が掲載されたsequence MIYASHITA PARK内「SOAK」公式サイトのトップページ

改変後の作品が掲載された「SOAK」公式サイトのトップページ(現在、当該画像は削除されている)
作品改変後の画像が使用されたsequence MIYASHITA PARK内「SOAK」公式サイト内、施設案内PDF

作品改変後の画像が使用された「SOAK」公式サイト内、施設案内PDFより (現在、当該画像は削除されている)

上記3点のスクリーンショット引用元「SOAK」公式サイト: https://soaks.tokyo/

作品の無断改変そのものが、既に作品とアーティストを傷つける行為です。しかも、その改変した作品を展示し続けようとしていた意図も読み取れることに、驚きを隠せません。

なお、こちらからの申し出により、「SOAK」のウェブサイトやSNSからはほぼ、改変画像は削除されました。しかし一部まだ使用されているものもあります。一般客(店舗関係者も含む)により撮影された写真は当然のことながら、インターネット上に公開され続けています。

さらに、三井不動産はアーティスト側から承諾を得ず、当該作品を現場から撤去し、東京近郊の倉庫に移動しました。驚いた私達が作品の状態を知るために現場の写真を求めたところ、アート作品を取り扱うにはおおよそ相応しくない場所に、無造作にポツンと作品が置かれていました。現在も、作品は改変された状態のまま同倉庫の中に隠され続けているものと思われます。

sequence MIYASHITA PARK」はコンセプトとして「既存のホテルのあり方にとらわれず、アートと世界、アートと人を『やさしくつなぐ』特別な場所としても活動しています。」と掲げています。そのような場所で、アート作品とアーティストを冒涜する行為が白昼堂々行われたことは今でも信じることができません。

私達はこの緊急性のある案件に対して、事件発生当初から現在に至るまで、迅速で誠意を持った対応を受けておりません。また、作品とアーティストへの敬意や文化への理解も全く感じられません。ひとえに自分たちの力のなさ、不甲斐なさを感じております。

また、今回のやりとりを通して、被害を受けた側がいかに弱い立場に立たされるか、大きな企業を前にアーティストという一個人や弊社のようなごく小さな法人がいかに無力であるかを痛感する毎日です。私達はこの半年、日々、もがき苦しんでいます。事件発生から半年を迎え、既に精神的には限界を迎えました。

吉田朗は長年に渡り、現代社会に潜む闇や矛盾、問題点を自らの作品を通して炙り出すことをテーマに作品制作をしております。そこで、今件について自ら声を上げることがアーティストの使命だと考え、事件から半年たった今、事件について初めて言及させていただくことにしました。

言及が遅れましたのは、相手側とできる限り穏便に解決策を探りたいと考えていたこと、このような不名誉な案件で世間の皆様からの注目を浴びたくなかったこと、そして応援してくださる皆様にご迷惑、ご心配をおかけすることが何よりも申し訳ないからです。吉田朗の作品は国内外でパブリックアートとして公開され、多くの方に愛着を持っていただいているものや、個人のコレクター様が保持しているものも多くあります。皆様に心からお詫び申し上げると共に、私達が置かれた苦しい状況を、何卒ご理解いただけますと幸いです。

今、目指していることは、傷つけられた作品を取り戻し、修復し、蘇らせること。

そして、文化を理解し、アートを愛し、作品を大切に展示してくださる新たな所有者の方に作品を寄贈することです。道のりは長いかもしれません。それでも1日も早く、ひとりでも多くの皆様に蘇った「渋谷猫張り子」をご覧いただき、楽しんでいただける状態に出来るよう、この先も全力を尽くして参ります。

皆様方におかれましては、今件をどうか暖かく見守っていただけますと幸いです。

 アーティスト    吉田朗
有限会社ユカリアート代表  三潴ゆかり